不動産M&A
不動産M&Aとは
不動産M&Aとは、不動産の獲得を目的としたM&Aのことを指します。従来の不動産取引とも異なり、M&Aの手法を用いて不動産を売買するのが不動産M&Aの特徴です。
不動産M&Aという言葉をあまり聞きなれないかもしれません。一般的なM&Aは、企業の保有する資産や事業の買収を目的としていますが、不動産M&Aは、不動産を取得する手段としてM&Aを利用するものであって、実体は不動産の売買です。不動産を売買するにあたって、不動産M&Aの手法を用いた方が、通常の売買に比べ節税効果が高く、近年は実施件数が増加しています。不動産M&Aでは株式譲渡のスキームが用いられます。不動産を所有する売手の株式を売買することで、売手の所有する不動産を会社ごと買主に移転させるわけです。売手が会社新設分割により、不動産を所有するためだけの子会社をつくり、その上でその子会社の株式を譲渡するというケースもあります。
不動産M&Aは、不動産業を営む企業同士だけでなく、不動産以外の業種・業態においても起こり得ます。その実体が不動産売買であるため、売主となる会社の業界を問わず不動産M&Aが成立する可能性があるというわけです。また、廃業を検討する場合に、優良な資産部分を分離して不動産M&Aを通じて売却することで、手元に残る額を多くできる可能性もあります。
不動産M&Aは近年増えてきているとはいえ、また認知度はそれほど高くありません。ただ、平成29年度税制改正以降で組織再編税制が見直され、不動産M&Aを検討する余地が生まれてきました。認知度が向上すれば、今後益々不動産M&Aを活用する企業が増えてくることでしょう。
以下で、不動産M&Aのメリット・デメリットを見ていきましょう。
売り手のメリット
■ 節税効果が高い
売手の一番のメリットは、節税効果が高いという点です。一般的な不動産取引では、売却益に対して法人税が課されます。さらに、法人税課税後の利益を、例えば企業の清算によって個人に分配した場合には、超過累進税率による所得税が課されます。
この場合、利益が大きいほど税率が高くなり、最大45%の所得税の負担が生じます。
一方、不動産を株式譲渡で売却すると、かかる税金は株式の譲渡益に対して一律20.315%の所得税・住民税が課されるのみです。条件によって異なりますが、不動産M&Aを行う多くのケースで節税効果が期待できます。
■ 廃業コストを削減できる
廃業コストや廃業に伴う手続きが不要になる点も大きなメリットです。
廃業する際には、解散登記、清算人登記、清算決了登記の登録免許税、官報公告費用、厚生年金保険や雇用保険などの廃止手続き費用、店舗であれば原状復帰費用などが必要となります。不動産M&Aにより会社ごと譲渡すると、これらの費用が不要です。
売手のデメリット
■ 買手が限定される
不動産を売却する場合は、不動産情報サイトに物件を載せ、広告することにより買主を探すわけですが、M&Aでは守秘義務契約を締結した上で自社情報を個別に開示していくことになります。このため、広範囲に情報開示できません。このため、必然的に買手が限定されてしまいます。
■ M&Aの手続きが煩雑
M&Aでは会社ごとの売却契約となるため、買手候補の選定、M&A関連の各種契約の締結、デューデリジェンスの決定など、煩雑な手続きが発生します。
■ 取引手数料が高い
M&Aを個人でを実現させるのは現実的に不可能に近いので、信頼できる仲介会社に諸手続きを依頼することとなります。必然的に手数料がかかり、取引の規模によって不動産売買よりもM&A仲介のほうが高い手数料がかかる場合があります。
買手のメリット
■ 節税効果が高い
不動産M&Aでは会社ごと買収する形をとります。法務局を利用する不動産登記の制度は利用しません。このため、登記申請時にかかる登録免許税、登記手数料がかかりません。また不動産の名義取得時にかかる不動産取得税もかかりません。
■ 取引金額を下げられる可能性がある
不動産M&Aは売手に節税効果をもたらすため、交渉次第で通常で購入するより不動産の売買価格を低く抑えられる可能性があります。
買手のデメリット
■ 思わぬ簿外債務を引き受けてしまうリスクがある
不動産関連に限らず、M&Aでは企業を買収した企業の簿外債務(未払いの税金、社会保険料、残業代など)を引き受けるリスクが常にあります。
売手がM&A以前に締結した不利な契約内容をそのまま承継するリスクもあり、専門家によるデューディリジェンス(買収監査)を実施したり、株式譲渡契約書の契約内容を注意深く精査したりする必要があります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
売却側 |
・節税効果が高い(不動産売却益に対する法人税、所得税がかからない) ・廃業コストを削減できる |
・買主が限定される ・M&A手続きが煩雑 ・取引手数料が高い |
購入側 |
・節税効果が高い(登録免許税、不動産取得税、登記手数料が不要) ・取引金額を下げられる可能性がある |
・思わぬ簿外債務を引き受けてしまうリスクがある |
不動産M&Aをまとめるにあたって、様々な内容を事前にしっかりと相談する必要があります。弊社では、売手様、買手様双方にとってご満足いただけるようお手伝いをさせて頂きます。